●6冊●『人類が消えた世界』『数学で犯罪を解決する』『言葉を使うサル』『嘘発見器よ永遠なれ』『100年の難問はなぜ解けたのか』『スイッチを押すとき』

2008年10月28日 00:25:00

泣き声が聞こえた。
ちょうどこの先の交差点辺りだ。
信号が赤に変わろうとしている。停止線でバイクを止めた。

泣き声は、交差点の歩道からだった。
女の子が、これでもかと泣いていた。
全身で泣きに泣いていた。

どうしたものか。
バイクをおいて、声をかけてみる。
周りには誰も居ない。
「どうした?」と声をかけてみる。
声が聞こえたのかどうか、返事はない。泣きに泣き、これ以上はないという泣き顔だ。

もう一度声をかける。「どうした」
親はどうしたのか。何があったのか。
周りを見てみるけれども、それらしい人はいない。
老夫婦が近づいてきた。

「お子さん?」と声をかけられた。
もちろん自分の子供ではない。そして、このままにもしておけない。
どこにそんなに力があるのか、一向に泣き止まない。
泣き声が弱くなることもない。
相当強い感情が彼女を支配してるのだろう。

老夫婦が声をかけている間、子供はすごいなあ、と感心していた。

「よし、警察を呼ぶか」

と老夫婦に提案した。
「迷子かね」「親はどうしたんでしょ」と暢気に子供に話しかけている。

「警察にいくか」と子供に承諾を求めてみた。
子供と初めて目が合った。
大きな丸い目だ。そして、激しくいやいやをした。
「警察いやか」と聞いてみる。うん、と肯いた。

警察がいやならしょうがない。
煙草に火をつけて、彼女にお菓子をあげた。
お菓子をあげたら受け取って、泣き止んでいった。

「いくつ?」と聞いてみた。指を3本たてた。
「3歳か」。首をふった。「違うの?」肯いた。
「いくつ?」指を3本立てる。「3歳?」首をふる。「3歳じゃないの?」肯く。
わけがわからん。

「名前は?」首をふる。だんだん楽しくなってくる。
「もしかして名前ない?」肯いた・・・

3歳くらいの彼女の思考性に神を見た。
この日本に、名前の無い3歳くらいの女の子が、道端で泣きに泣く。
それは、新しい宗教性の発生かもしれない。

とはいえ、このままじゃどうしようもない。

「お母さんは?」「家は?」「お父さんは?」「どこに行くの?」
いろいろと声をかけてみる。彼女は、肯いたり、首をふったり。
まったく全貌がつかめない。

老夫婦が警察を呼んできた。

『人類が消えた世界』著/アラン・ワイズマン_訳/鬼澤忍
『数学で犯罪を解決する』著/キース・デブリン_訳/山形浩
『言葉を使うサル―言語の起源と進化 』著/ロビンズ・バーリング_訳/松浦俊輔
『嘘発見器よ永遠なれ』著/ケン オールダー_訳/青木創
『100年の難問はなぜ解けたのか』春日真人
『スイッチを押すとき』山田 悠介

仕事で最近読んできた本が5冊。
暇つぶしについ手にしてしまった小説が1冊。

仕事で読んできたのは、人類の課題、数学、進化というあたりがキーワードのもの。
5冊を読んで、内一冊が仕事になった。

そして、一冊の小説。
書店を覗いているときに気になっていた作者。
よく平積みになっている。ポップを見ると売れているよう。
一冊は読んでおかなくちゃな、と。

400ページ近い小説。けれども文字が大きめだからそれほどでもない。

400ページ近い小説。けれども、14ページ目で破綻した。
完全に破綻した。音を立てて、駄目駄目の駄目になった。
(なんだこれ・・・)

これほど見事に破綻する小説もない。
笑うことすらできない。
描写と解釈の矛盾、登場人物の非人間的所作、時代性の欠落と想像力絶無の言葉。
これが売れてる?

着想だけで書き始めて、何も考えていない文章。
だらだらと

だらだらと、言葉の無駄遣い。
着想は面白いのに・・・
こんなのを舞台化したりする奴がでてくるんだよな・・・

と思いながら読み終えると、本とに舞台化しているところがあった・・・脱力・・・

この作者は、ロボットだ。
人間がまるで書けていない。はっきりと言える。
この作者は、命がけの恋をしたことがないのではないか。
命と引き換えに何かを手に入れようと思ったことがないのではないか。
友人を信じていないのではないか。友達から信頼されていないのではないか。

甘えるな。

できの良いロボットだ。

ロボットが言葉をもて遊ぶんじゃない。
着想がそのまま作品になるほど小説が甘いものか。

子供が泣くというのは、

3歳くらいの、家があっちだったりこっちだったり、
親がいたりいなかったりの少女が、

全身全霊で魂を吐き出すことだ。

簡単に「泣く」と書くな。
簡単に「涙を流す」と書くな。

命のない作品。

甘えた作品。

だがしかし、売れているようだ・・・
この命のない作品が。