●虚数の寂しさに涙して5冊●『「ファウスト」と嬰児殺し』『自然にひそむ数学』『虚数iの不思議』『なっとくする虚数・複素数の物理数学』『黄色いチューリップの数式』

2008年11月4日 02:27:48

目の前でコトバが寝ている。
キーボードの音に目を開けることもなく、
笑い顔で寝ている
ぼんやりとそれを見ている、真夜中。

こないだから電池を抜いていた時計に単三電池をいれた。
秒針が動き出した。
時間を合わせていないので、時間はあっていない。
とんでもない時間を指している。

秒針が動くのを見たかった。

安い時計で、これぞ一秒!という音がする。
チッ!チッ!チッ!大きな音。安っぽい音だけれども、
原風景なんだ。

高校生の頃、真夜中に秒針の音を数え続けた。
日本海が荒れて、時化の荒音と鬩ぎあう一秒の音。

『「ファウスト」と嬰児殺し』大沢武男
『自然にひそむ数学』佐藤修一
『虚数iの不思議』堀場芳数
『なっとくする虚数・複素数の物理数学』都筑卓司
『黄色いチューリップの数式』著/バリーメイザー_訳/水谷淳

虚数を調べていた。

というか、昔から虚数という概念に哲学性を感じていて、
それが何なのか、と。
虚数という概念がもつ宗教性或いは文学性、か。

虚数を習ったときから感じていたその親近感。
虚数のもつあまりに強い人間味。
虚数が放つ寂しさ侘しさ。

虚数が一人荒野に立っている。

そのなんという景色。

虚数が一人荒れ海に漕ぎ出す。

そのなんという勇気。

虚数が、寂しい。

そんな20年も抱き続けてきた感覚が何なのか、
あらためていろんな本を読んでみた。
虚数の寂しさを説明している本はない。
そりゃそうだろう。
数学書だ。虚数の姿形を説明している。

これらの本を読みながら、やっぱり、その孤高の勇士を見た。
今日、友人辻慎之介くんと会った。
会ったとたん、大笑いしながら、こないだの誕生日プレゼントを返された。
さすがに笑った。
プレゼントを返却されたのは生まれてこのかた経験がない。
それも笑いながら返された。
乾坤一擲心意気の逸品プレゼント。
心意気だけは受け取ってもらえたようだ。
「もう一品、すごいのがあるんだ。じゃあ、それをプレゼントするよ!」
と言うと、

品物が何なのかを聞きもしないで、辞退された。
来年だ。来年を待とう。
来年はプレゼントを返されないように、嫁宛てに贈ろう。

そうだ。明日、見沢さんの墓参りに行こう。