●本を読む・1191●『大杉栄集』【近代日本思想大系20】『昭和天皇の御製』『快盗ルビイ・マーチンスン』『燃えつきた地図』

2009年1月10日 23:36:56

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本を読む。

しかしまあ、毎日毎日本を読んでるなあ。少し、不眠周期か。
布団に入っても全然眠れない。枕もとの電気を点けて、どんどん読む。
1時間くらい経ったかな、と思って携帯を見てみると、2時間も経っていたりする。
(明日なんかない、明日なんかない)と呟きながらも、やっぱりすこし不安になったりする。

(うーん、このまま眠れなければ、
もしも、もしも、万が一、明日があったとしたら・・・しんどいだろうなあ・・・)

そう思うも、やっぱり本は面白い。
なんでこんなに夢中に本を読むんだろう。

【本を読む、と言う】

こうやって他者の書いた言葉を読み漁る。本を読む、と言う。
そして、演劇でも、脚本を読むことを、本を読む、と言う。
前に、読書論を展開したことがあったが、その論理は未完だ。
そのいくつかの論点の中で、そも、『本』とは何か、と考えたことがあった。
今でもよく、分かっていない。
何だろね、本って。
今、手元にある何冊もの本。そして、俳優がそれを本として舞台に上がる本。

ぼくにとって本とはなんだろう。
俳優にとっての本とはなんだろう。
それは、

全く違うものだろうか。
ぼくにとっての本は、ぼくにとってだけの本であり、
他者の本とは、何かが全然違うのだろうか。
でも、ビッグセールスを記録する本もある。何十万何百万も売れる本。
それを読む、何十万何百万の人びと。
おんなじ本なのに何十万何百万の思いがあるだろう。
なんでだろう。

おんなじ本なのに。違う。
それはやっぱり、読み方が違うのかな。
読み方。本を読むということ。
鈴木さんは、「人生を読むんだ。明日を読むんだ」と言った。
そして、ぼくは、「読むことは、何かを記述することだ」と言った。

ぼくだけの言葉。
そして、あなただけの言葉。
それが、

きっと、ある。

『大杉栄集』【近代日本思想大系】編集・解説/大沢正道(442)
『昭和天皇の御製』(158)
『快盗ルビイ・マーチンスン』 著/ヘンリイ・スレッサー_訳/村上啓夫(267)
『燃えつきた地図』安部公房(324)

大好きな本『快盗ルビイ』と『安部公房』、そして、近代日本思想大系。

公房中毒の現在、やっぱりこれを手にしてしまった。
そして、『密会』『他人の顔』『方舟さくら丸』と志向が伸び始めている。
こりゃ、どんどん読みそうだ。
公房中毒、怖いもの見たさの公房中毒。
自分の奥底の暗闇と向き合ってしまう安部公房。それを見るのが辛いのに読んでしまう。
物語を知っていても、その言葉に触れなければならないなんという自虐。
公房中毒。

と、安部公房と自分の付き合いをこうやって書いてみても、
他者が安部公房を読むとこんなことは思わないのかもしれない。

本を読むこと、か・・・

近代日本思想大系、大杉栄集を読み終えた。
これは、面白い!
鈴木さんもおすすめだった。
無政府主義者、アナーキスト、伊藤野枝、虐殺・・・
大杉栄という名前でいろんなキーワードを思い浮かべるだろう。
いやいや、印象が全く変わりましたよ!

楽しい家族思いのおっさん。
獄中記と日本脱出記はおすすめ。
ひょうひょうと生きていながら、激動の精神を生ききった大杉栄。
思想変節なく、自らの内なる声に忠実に生ききった大杉栄。
彼は、政治に生きたけれども、彼こそが芸術家といわれる一人種ではなかったのか。
時間を彼の内なる声に塗りこめ、
世界に飛翔し、思想の思想たる所以を体現し、

彼自身を生ききった。
生ききった。

暗闇にコトバが遊んでいる。
ばたばたと騒々しく飛び回る。
本を読んでいる枕元にやってくる。
派手な音を立てて、布団の上に着地してくる。
畳に顔をこすり付けている。
暗闇に、コトバ。

「コトバ、お前も本を読むか?」と聞いてみる。

「笑止!俺自身が言葉だ!言葉で書かれた本なんかには用はない!」とコトバが暗闇に鳴いた。

「ならば、言葉以外で書かれた本を見せてやろう!」ぼくも受けてたつ。

「おう!見せてみろ!」猛禽類たる精悍な顔を見せた。

「さあ、見せてみろ!」

コトバが、暗闇に見栄をきった。
言葉以外で書かれた本か。言葉以外で書かれた本・・・
多分、コトバは、絵本や、写真集なんかをさしてはいない。

もっと形而上の、
あれは、そんな言葉だった。コトバの羽音がした。飛び立った。
言葉以外で書かれた本を見せることができないぼくに、愛想をつかしたのか。
コトバが暗闇に飛び立った。

暗闇に向かって飛び立った。


『大杉栄集』

獄中記
続獄中記
思想論説集一
死灰の中から
処女と貞操と羞恥と
一情婦に与えて女房に対する亭主の心情を語る文
お化けを見た話
思想論説集二
日本脱出記

「人間大杉栄―回想によるモンタージュ」編・大沢正道
・富岡誠(中浜鉄)・吉川守圀・山川均・堺利彦・大杉栄・荒畑寒村・堀保子
・宮嶋資夫・有島生馬・佐藤春夫・村木源次郎・賀川豊彦・和田久太郎・近藤憲二
・近藤栄蔵・伊藤野枝・林倭衛・内田魯庵

「解説」大沢正道

年譜
参考文献