●574●『プルードン バクーニン クロポトキン』【世界の名著42】

2009年5月24日 23:35:35

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『高木さん、地球は丸くないんですよ』
と池袋・サンシャイン通りで突然、声をかけられた。
当該主題の夢を幾度となく見ていたので、もちろん疑った。

ぼくは、『名探偵コナン 漆黒の追跡者』を観ようと劇場に向かう途中だった。
劇団員の誰かを誘おうと昨夜、思ったんだ。
劇団再生メーリングリストで、
「明日、『名探偵コナン』を観にいきませんか。行ける人は、高木に連絡ください」と。
携帯電話に手を伸ばし、けれども、何故かそうすることをやめたことを思い出した。

池袋東口を出て、
(三越は閉店したんだな)と思いながら、その横道を歩き、
サンシャイン通りに抜けた。劇場はすぐそこだ。
(もう少し時間があるか)と、ハンズに足を伸ばそうとした、その時だった。

『高木さん、地球は丸くないんですよ』と、背後から言われた。
振り返ると、コナンのスクリーンから出てきたような、黒ずくめの男が、

いた。

答えようがない。数瞬の間に死力を尽くし、かろうじて出た言葉は、
「それで?」

今その時を振り返ってもそれ以上の言葉が思い浮かばない。

「それでじゃないでしょう、高木さん」
「いや、そのことは、夢で何度も、」
「夢? 夢ってなんのことですか? 私が言ってるのは、」
「わかってますよ。地球は、」
「そう、丸くないということです」

ぼくと黒ずくめの男の周りを休日の素人が歩き流れていく。

「だから、ぼくにどうしろって話なんですか」
「どうするもこうするもないでしょう。高木さんは、知ってるんですから」

いらつく。「だから!」と声を荒げると、

「しーっ。」

「高木さんは、地球が丸くないことを知っている。
知っているのに、『そうしていない』ことが我々にとっても問題なんですよ」

「そうしていないこと?」

「そうですよ。『MATRIX』は好きですよね」

「何の話?」

「いえ、こちらの話。さあ、行きましょうか」

「どこに」

「高木さんは『そうしていない』。だから『そうする』ところへ、ですよ」

恐怖。

恐怖にかられて、サンシャイン通りを走り逃げる。
走って、走って、逃げる。
気が付くと、音羽の鳩山記念館だ。田中角栄がいる。小泉がいる。
満開の桜。歴代の鳩山当主の記念品を見て回りながら、

広大な庭に黒ずくめの男を捜す。

恐怖、恐怖。

目が覚めた。やっぱり夢だ。
それにしても、『地球は丸くないんですよ』の夢は、どんどん現実に近付いていく。
この夢も、現実なのか夢なのか、本当に判断ができなかった。

『プルードン バクーニン クロポトキン』【世界の名著42】

(574)
責任編集/猪木正道・勝田吉太郎

(地球は丸くないか)と、そのことをやっぱり考える。
現在の生活が変わらないのであれば、
地球が球体だろうが、平面だろうが、亀が支えていようが、
エーテルの海に浮かんでいようが、

どうでもいい気もする。
確かに、僕自身の力で地球の球体性を証明したわけではないし、
球体の感触をこの身に実感したこともない。

『地球は丸くないんですよ』という、立てられた問いに対して、
形而上の思考を与えることは簡単だ。
その思考実験はとても楽しいものになるだろう。
ゆっくりと、散歩をしながらでも考えつくしてみたいとも思う。

夢の中の黒ずくめの男は、ぼくがそれを知っていると言った。
どういう意味だろう。意味などないのかもしれない。
それよりも、

夢の中にまで、『名探偵コナン』の黒ずくめの奴らが出てくることの方が問題だ。
そんなに観たいのか『名探偵コナン』

観たい。いますぐにでも劇場で観たい。
観にいく時間を作りたい。

さて、『世界の名著』の扉を開いた。
全81巻の一冊目を読んだ。順不同で読んでいく。
最初に手にしたのは、鈴木さんお奨めの『プルードン バクーニン クロポトキン』
アナーキズムだ。

とんでもなく面白かった。
これは凄い。こんなのがあと80冊もあるのか。
ぞくぞくする。わくわくする。嬉しくて寝てる場合じゃない。

困った困った、こんなに楽しい本が山積みなのにそれを読む時間がない。
困った困った。

寝てる場合じゃない。
俗世に関わりあってる場合じゃない。
形而下に遊んでる場合じゃない。


『プルードン バクーニン クロポトキン』【世界の名著42】

・「アナーキズム思想とその現代的意義」猪木正道・勝田吉太郎

プルードン
「十九世紀における革命の一般理念」 訳/渡辺一

バクーニン
「神と国家」 訳/勝田吉太郎
「鞭のドイツ帝国と社会革命」 訳/勝田吉太郎
「ロークルおよびショー・ド・フォンの国際労働者協会の友人たちへ」 訳/勝田吉太郎
「インタナショナルの政治」 訳/勝田吉太郎

クロポトキン
「近代科学とアナーキズム」 訳/勝田吉太郎