●1562●『小林秀雄集』【近代日本思想大系29】・『世界教養全集・別巻1』・『近代の藝術論』【世界の名著・続15】

2009年9月3日 22:40:04

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たくさんのいい本を読むだけの時間があれば、案外と満足するだろうな。
と、ちょっと思ってみたりした。
並読していた全集3冊を読み終えた。
感想? きちんと書くとすれば、紙面がいくらあってもたらないだろうし、
どうでした? と聞かれれば簡単には答えることはできる。

小林秀雄は、やっぱりいいですねぇ。
「ネヴァ河」とか「罪と罰について」なんかは、何度読んでもいいものですよ。
教養全集ですか。すごいラインナップですよ。良品揃いですよ。
「近代の藝術論」は難しいです。これは難解。難しい。
でも読み応えたっぷりの作品ですよ。

一分もあれば言えるな、とちょっと思ってみたりした。
それにしても、次の舞台の絵が頭から離れない。
物語の細かい設定やプロットが完全に決まったわけでは全然ない。
大きな大きな空の下にいるぼくが見えるだけだ。
けれども、その「見える」が大問題で、現実のこの空間や景色や時間と同じように、
驚くほど「明らかに」見えている。

永代橋のたもとの喫茶店で、次の作品をスケッチした。
その原稿は、あべあゆみに渡し、入力されて今、ここにある。
それを読み直してみる。はっきりとした空がある。

よし、あらためて書き始めてみるか、と思うも、実は、どう書いていいのかわからない。
全然わからない。
そりゃ、これまでと同じやり方なら、定石にのってペンを運ぶなら、いくらでも書ける。
ちょちょいのちょいと書きあがるだろう。
でも、どうも違うみたい。
今、見えている「この絵」を言葉で書こうとすると、何か、何か、
何かが、

おかしい。

言語化できない作品なのかもしれない。

目の前に見える一本の舞台を書くのに、それに相応しい戦い方がある。
その絵を闘い取るために闘う戦い方がる。
それを探し続けてきた。この2年間、それを探し続けてきた。
脚本を書く方法なんか知ったことか。

目に見える絵が違うのだから、過去の方法が通用するはずがない。
手に入れた方法は常に捨ててきた。自分の真似だけはするな、と固く思ってきた。
自己を模倣するものは、その時点で何も生み出せない。
自分の真似だけはするな、と。

劇団員さえ歯牙にもかけず、ぼくはぼくの絵に言葉を探す。
告白するなら、「君一人」のためだけに脚本は書いてきた。
今もそうだ。「君一人」のためだけに書いている。

『小林秀雄集』【近代日本思想大系29】

(465)

『世界教養全集・別巻1』

(513)

『近代の藝術論』【世界の名著・続15】

(584)

「君一人」に書く脚本に何の遠慮がいるものか!
ぼくは、ぼくの能力を知っている。
ぼくは、ぼくの容量を知っている。
ぼくは、それをきちんと知っている。

そして、先日、ぼくは、ひとつの言葉をこの体内に手に入れた。

言葉はただあるのではなく、戦いとるものだということを実感した。
この体の全細胞を総動員して、たった一つの言葉を手に入れる。

次の舞台の絵は、変わらずにある。
ぼくの一言も正確にある。
その一言を「台詞」や「ト書き」を紡ぐことで
その一言を言葉で修飾していくことで、
ぼくの絵は、鈍化しないか。目の前の純粋が鈍磨しないか。

ぼくは、先日全細胞の戦いで言葉を一つ、手に入れた。

毎日本を読む中で、
ページをめくる中で、そんな一言をどうしても探す。
作者がその体全てで、血まみれで手に入れた一言を探す。

『小林秀雄集』【近代日本思想大系29】

(465)
編集・解説/吉本隆明

手帖
手帖
手帖
手帖
眠られぬ夜
Xへの手紙
女流作家
ネヴァ河
外交と予言
ヒットラアの「我が闘争」
道徳について
オリムピア
自己について
パスカルの「パンセ」について
当麻
西行
実朝
バッハ
年齢
ニイチェ雑感
私の人生観
ヒットラアと悪魔

マルクスの悟達
文芸批評の科学性に関する論争
批評家失格
批評家失格
逆説といふものについて
文学批評に就いて
思想と実生活
文学者の思想と実生活
酒井逸雄君へ
井の中の蛙
戦争について
支那より還りて
事変と文学
イデオロギイの問題
事変の新しさ
歴史と文学

中原中也の思ひ出
「テスト氏」の方法
中野重治君へ
戸坂潤氏へ
志賀直哉
堀辰雄の「聖家族」
「罪と罰」について
林房雄
トルストイ
ゴッホ

失敗

信楽大壷
栗の樹
美を求める心
鎌倉
もみぢ
お月見
スランプ

「教祖の文学―小林秀雄論」坂口安吾

解説・吉本隆明

年譜・参考文献

『世界教養全集・別巻1』

(513)
『日本随筆・随想集』川端康成編

『近代の藝術論』【世界の名著・続15】

(584)
責任編集/山崎正和

フィードラー

「藝術活動の根源」訳/山崎正和・物部晃二

ハリソン

「古代藝術と祭式」訳/喜志哲雄

コリングウッド

「藝術の原理」訳/山崎正和・新田博衛

パノフスキー

「人文学の実践としての美術史」訳/柏木隆夫

ヴェルフリン

「美術作品の説明」訳/新田博衛

メルスマン

「音楽の現象学」他 訳/滝本裕造

シュタイガー

「文藝解釈の方法」訳/新田博衛