●1039●『ときめきに死す』『生きるなんて』『夏の流れ』『大杉栄自叙伝』

2009年9月5日 23:49:10



丸山健二を無性に読みたくなる時がある。
一年に一度は、決まってある。丸山健二が新刊を出す時期だからだろうか。
それとも、体がどこかで彼の言葉を欲しているのか。
そして、そんなときに手にするのは、『ときめきに死す』だ。必ずそうだ。
どうしようもなく読みたくなる。
読みかけの全集を置いて、丸山健二を手にした。

そんなような時期が何故か、ある。
太宰を無性に読みたくなったり、ドストエフスキーだと思ったり、
埴谷雄高や、三島由紀夫や、とにかく、
何をおいても読みたくなる時がある。

先日、ぼくのこの全細胞を走りぬけ、一つの言葉を手に入れた、と書いた。
「それは、どんな言葉ですか?」と何人かの方に聞かれた。
言えるはずがない。ぼくだけの言葉だ。
「いつか、脚本に書きますよ」と答えた。

そして、ふと考えた。ぼくがぼくの存在を賭けて獲得したぼくだけの言葉って、
どのくらいあるだろう、と。
これまでに書いた30本近い脚本を思い出してみる。
つらつらとスケッチしている短歌を読み出してみる。
何本かの小説や、ノート数冊になる詩を思い出してみる。

ぼくがぼくの存在を賭けて獲得した言葉。
多分、10もないだろう。それらの言葉を獲得した景色は今もありありと思い出せる。
両手で数えられるだけの、たったそれだけのぼくだけの言葉。
脚本に書いた言葉もある。
書いていない言葉もある。
永遠に書くことはない言葉もある。
多用している言葉もある。
けれども、たった両手だ。

20年も書いてきて、それだけしか、ないんだ。

『ときめきに死す』丸山健二

(197)

『生きるなんて』丸山健二

(220)

『夏の流れ』丸山健二

(297)

『大杉栄自叙伝』大杉栄

(325)