『憂国のドン・キホーテ』『作家の誕生』『こころの王国』『古事記夜話』『和の思想』

2010年1月20日 22:24:55



対談をしたりすることもある。
全く知らない人と、ということはあまりない。
何度も公私にお会いしたりしているような方々が多い。

なんにせよ、対談の前には相応の準備をする。
大体自分よりも年長の先輩方だ。一家言ある方々だ。素手で挑めるわけがない。
その方の著作を丹念に読む。作品を観る、触れる。
その方の過去の発言を当たる。その方の根拠を当たる。対談は、苦手だ。

武備にかなりの時間を当てねばならない。
調達した武器を使いこなせるよう頭の中を整理する。
ハンドガンはここ、バズーカはここ、歩兵はここ、遠距離キャノンはここ、
死なばもろともの核はここ、和平条約の条文はここ、調印のための万年筆はここ、と。

対談は、苦手だ。得ることが多いにも関わらず、その疲労ときたら・・・

とはいえ、お話を頂くとほいほいと出かけていく。
日本全国どこへでも出かけていく。ただ出かけたいだけなのだけど、ほいほいと。
新幹線にしろ、飛行機にしろ、長距離の移動は、案外に好きだ。
対談の前にその移動だけで肉体が疲労するにもかかわらず、長距離の移動が好きだ。

大体、本を読んでいる。そして、いつの間にか眠っている。
飛行機なら、前方の通路側の席を希望し、新幹線なら窓側。車なら運転。
車の運転以外は、うとうととしている。それでも、その移動中に読もうと決めた本は、読む。

新幹線3時間なら、新書一冊と睡眠。
飛行機1時間なら、新書一冊と睡魔。

お話を頂けば、全国どこへでものこのこと出かけていく。
鞄には、本とパソコン。新幹線だ飛行機だとうきうきし、必要以上に早起きして出かけていく。
本以上に得るものが多い。それは確かだ。
生の人間の声。

それが好きなんだろうな、と今日、思った。
考えて、一言一言語られる、その人物の、声。言葉。
思いもよらない一言。意外な声。その人の匂い、圧力、光と影。

対談にしろ、取材にしろ、ある程度すすむと、
(もうわかった。何も語るな!)と感じる瞬間が必ず、ある。
もうわかりました。それ以上の説明は無用。
全ては、今のあなたの目でわかりました。
全ては、今のあなたの熱でわかりました。
全ては、今のあなたの呼吸でわかりました。

それ以上の言葉はいりません、と。

『憂国のドン・キホーテ』赤尾敏
『作家の誕生』猪瀬直樹
『こころの王国』猪瀬直樹
『古事記夜話』中村武彦
『和の思想』長谷川櫂

そんな本に出会うこともある。
「憂国のドンキホーテ」がそうだ。「古事記夜話」がそうだ。
赤尾敏、中村武彦。両人とも右翼と呼ばれる。赤尾敏は活動家だ。中村武彦は思想家だ。

思想は優しくなければならない、いつもそう思う。
強さよりも、優しさを、求める。だから、寂しいんだ。

そんな本に出会うこともある。
赤尾ドンキホーテも中村古事記も、底抜けに優しい。
もちろん強さが同居していることは確かだし、その強さが前面に出ている。
けれども、強さよりも優しさが、二人を二人たらしめた。
左右諸先輩方に叱られるかもしれないし、見当違いだと指摘されるかもしれないけれど、

言い切る。
優しさが彼ら二人を生かし、だからこそ、今、生きている。
生きて残り、思想は根ざし、生きて今も成長し、生き続ける。

赤尾敏という優しさ。
中村武彦という優しさ。