鈴木邦男『竹中労』新著発売!

2011年12月21日 20:29:12

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いい本だ。その一言が一番、近い。

読みやすく、分かりやすく、論点がぶれず、主張がはっきりとしている。
鈴木節は炸裂し、あちこちに話が飛んでいるようで、決してそうではない。
いつの間にか、一つ所に収斂している。マジックを見ているような本だ。
もちろん、竹中労、という人物を追いかけると「あちこち」に飛ばざるを得ないだろう。
その「飛ばざるを得ない」という暴れん坊を鈴木さんは、がっしとペンで押さえつけている。
押さえつけながら、鈴木さん自身が、「あちこち」に飛んでいる。だから、

マジックを見ているようなんだ。
大がかりなステージマジックも用意されている。
小さなテーブルで行われる目の前のマジックも用意されている。

キーワードという小道具も無数に用意され、時代も絵巻物のようにスライドする。
読んでいる方は、理解・納得したと思ったら、もう別のステージに案内されている。
そのスピード感も売れっ子マジシャンの手法そのものだ。

そして、「竹中労」入門、としても最適だ。「竹中労」を知らない人もこれを読めば興味がわく。
必ずわく。他の本を読んでみようかな、と必ず思う。ちりばめられたキーワード。
「里見岸雄」「赤軍」「三島由紀夫」「野村秋介」「天皇」「大杉栄」「右翼と左翼」
その中心に鈴木邦男がどっかと腰をおろし、睨みを効かせる。

本書の説得力は、鈴木さん自身が竹中労と交わした言葉から生まれている。
なるほど、生きた言葉というのは、体験や経験の裏打ちが必要なんだと思わせる。
空虚な言葉は、徹底的に排除されている。空語のなさが、ある種の跳躍を思わせるのかもしれない。
鈴木さんの筆の特徴は、狙いすませた空語が一つの緩衝となり次の論への自然なスライドを展開させるのだが、
本書には、それがない。見事に実語がつらなる。だからマジックなのだ。

目の前で現実を見せられる。現実の言葉が目の前にある。

だからといって、堅苦しい本では、決してない。
だからといって、軽い本では、決してない。
読み進めているうちに、「あっ」、「もう終わりか」と思った。読めばきっとそう思うはずだ。
もっと見たい。もっと読みたい。必ずそう思うはずだ。
もっと知りたい。もっと考えたい。誰もがそう思うはずだ。これは、そんな本だ。

鈴木さん自身がどう思うか知らないが、本書は、ここ数年の鈴木さんの著作では一押しだ。



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ここ2カ月の『月間TIMES』
毎月のことながら、読み応えのある記事だ。
鈴木さんの現在の活動と「三島由紀夫」「野村秋介」というキーワードが密接につながる。
それは、鈴木邦男というフィールドにその二つのキーワードが、その二人がいつも、

存在として、「在る」からなのだろう。
毎月そう思わせる見事な連載だ。