SIONを聴き続け

2015年10月4日 03:45:02

空を見たり
街を見たり
目を閉じたり
お前を見たり
俺を見たり
昭和さんを思い出し泣いてみたり
二人で回った全国のあちこちの空を想い見たり
SIONを聴き続け昭和さんを思うのもおかしな話だが
それにしても面白い公演だったな

だいたいぼくが車の運転をしていた
いや、そんなこともないか
昭和さんもしてたな
車の中で公演の打ち合わせをしていた

「高木、始まりはあれでいこうな」
「そうですね」
「で、あれをやって、これをやって、」

昭和さんは詩の朗読者
2時間の舞台の中でいくつもの寺山さんの詩を叫んでいた

そう、打ち合わせをしながら、ぼくはその決められた構成をメモして本番に臨む
ぼくは音響だ
詩には決まった曲がある
当日になって昭和さんが何をやるかわからないので
劇場にはとりあえず全ての曲を用意して乗り込んでいた

そう、構成を決めて本番が始まる
けれども、昭和さんがその構成を無視したりするのだ
それはまあ仕方ないことだ
急に、気分で、のりで、或いは、忘れて、楽しくて、

構成通りに曲を準備していたら、突然別の詩をしゃべり始めたりした
そんな時はもちろん曲を差し替えるのだ
最初の頃は慌てたものだが、次第にそれがたのしくなっていった
打ち合わせをしないで、

「昭和さん、好きにやってください。付いて行きますから」

そんな風にしていた。
音響の操作卓から、舞台の昭和さんを見ていると、次に何をやりたいのかわかってくるものだ

SIONを聴きながら昭和さんを思い出すのもおかしなもんだが

ある時昭和さんが言ったことがある
「高木、俺は寺山さんに言われたことしかできねぇよ。寺山さんの演出通りに死ぬまでやるしかねぇんだ」
昭和さんはその時、笑っていた。あの笑顔を。