森田童子が回る夜

2016年1月13日 16:58:29

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やさしく発狂する

なんという一行だろう。

とてもぼくには書けない。言葉にできない。触れられない。

ぼくは、聞いた音楽のその最初は、大体覚えている。

TheModsとは、いつどうやって出会ったか。誰に教えられたのか。

ARB、オフコース、石川さゆり、有頂天、シオン

何歳の時に、どんな状況で、誰に、って、ほぼ覚えているのだが、さて、

森田童子に関しては、それがどうしても思い出せない。

気が付いたら、はまっていたのだ。20代、ぼくは、あちこちの中古レコード屋さんで、探していた。

森田童子のレコードを探し歩いた。インターネットがない時代だった。

何件も何件も歩き回り、レコードを買い集めていた。

そのレコードは、今でもぐるぐる回りながら、森田童子を再生してくれる。

今、こうして、目の前で。

君といっそこのままだめになってしまおうか

この一行も書けないな。こりゃ書けない。

春はまぼろし
ふたりは悲しい夢の中
君といっそこのままだめになってしまおうか
もどろうか
もどろうか
それとももう少しこのまま君と眠ろうか

 

ドラマで曲が使用され、街にあの声が流れていた時期があった。

びっくりした。(おおー、森田童子!)と、ほんとうにびっくりしたものだ。

凄い曲をあてたもんだな、と驚いたものだ。舞台ではなく、テレビで、って。

その結果、何枚かのCDが発売されたが、さすがに全曲ではない。

レコードにしかないのがあるのだ。

そんな中でも僕は、

東京カテドラル聖マリア大聖堂録音盤(1978年11月01日/ライブ盤)

が好きだ。レコードの中でしゃべるその透き通るような声と今にも崩れ落ちていくような儚さ。森田童子のMCに酔いしれるのだ。

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この写真はそのライブ版じゃないけどね。

玉川上水沿いに歩くと
君の小さなアパートがあった
夏には窓に竹の葉がゆれて
太宰の好きな君は睡眠薬飲んだ
暑い陽だまりの中君はいつまでも
汗をかいて眠った

あじさいの花よりあざやかに
季節の終りの蝉が鳴いた
君から借りた太宰の本は
淋しいかたみになりました
ぼくは汗ばんだなつかしいあの項の
景色をよく覚えている

 

それにしても、こんな歌詞を投げかけられて、影響を受けない10代はいるだろうか?

そりゃ、誰だって玉川上水沿いに住んで、太宰でも読んでみようって思うだろう。

10代にとって、死は観念でしかない。だから美しい。だからふらふらと魅せられてしまう。

真夏の淋しい蒼さの中でぼくはひとり

作品の中で、ぼくはしばしば森田童子の曲を使用する。

それは、勝負なのだ。日本語であるゆえに舞台での使用は実は難しい。

台詞と歌詞が喧嘩するのだ。だから、いつもとても注意深く、あてる。

曲が聞きたいから舞台で使うのか、作品にとって効果的だから使うのか、

自分でもよくわからない。まあでもそれでいい。

淋しいぼくの部屋に静かに夏が来る
汗を流してぼくは青い空を見る
夏は淋しい白いランニングシャツ
安全カミソリがやさしくぼくの手首を走る
静かにぼくの命はふきだして
真夏の淋しい蒼さの中でぼくはひとり

やさしく発狂する