★数日間に読んだ6冊★

2008年1月5日 21:15:27

★最近読んだ6冊★

フルトヴェングラーの映像を見続けているからだろうか、
ナチスの夢を見た。

『わが闘争』を持って、フリードリッヒ通りをぶらぶら歩いていたら、
ヒトラーが車から顔を出して、
「あれからどうなった?」と聞いてきた。

「あれから?」
「そうだ、あれから」
「『わが闘争』の話?」
「違う!ジョンレノンと私の事だ!」

ヒトラーは、そう言った。
そして、その車に乗ることになった。
助手席の自分。
後部座席のヒトラー。
ヒトラーは、ノートパソコンを見ながら、
「パソコンは凄いねえ、写真がいっぱいあるねえ」
「音楽も聴けるし、映画も見れるんだよ」
なんて、暢気なことを言っている。

「それで、ジョンレノンがどうしたんですか?」
そう聞くと、
「お前が言ったんだろ!ジョンレノンと俺が同じだって!」
と、急に怒り出した。隣には戦車が走っている。

「フルトヴェングラーの指揮は、気狂いだな」
「ワグナーは、変態だよ」
「芸術の長さを測ったことがあるか」

そんなことを言い続けているヒトラー。

そして、自分が持っていた『わが闘争』を見つけて、
「そうだ!ナチスはこのまま高速で回転するんだ。
高速で回転し続けて、日本になるんだ。
その本の最後にそれを付録でつけたんだ。見てみろ。」

『わが闘争』の最後のページを開くと、
ナチスのカギ十字があり、
それが、ルーレットみたいに回るように作られていた。

「高速だ!」

言われて、カギ十字をぐるんと回す。
滑らかに回る。
回り続けて、カギ十字は溶けていった。
そこに残ったのは、赤地に白丸。
日の丸とは色が逆のなんとも奇妙な旗。
だが、

「ほら!言ったとおりだ!日の丸だ!」

ヒトラーはそう言った。

そんな夢を見ていた。

『大政翼賛会前後』杉森久英

帯には、「戦前昭和の貴重な真実!」
悪名高い、と枕詞がつく大政翼賛会だけど、
時代が作る音楽があるように、
時代が作る一枚の絵があるように、
時代が作る一人のアイドルがいるように、
時代が作る一つのシステムがあるのではないか、と。

なんとなく構えて読み始めたら、どうも印象が、違う。
軽妙洒脱な語り口、
のんびりとした風景、
軽いのりの描かれてる人物。
これから戦争に突入していくという緊迫感が、ない。

本書は、杉森久英という著者の思い出的自伝的なもの。
著者は、田舎の中学教師から、中央公論社に入社し、
そして、なんとなく大政翼賛会の下っ端部員になったいう経歴。
その足跡を、本当に個人的な目で書き綴った作品。

「大政翼賛会」の「ある一面」を読み取ることはできるけれど、
「大政翼賛会」の本質や政治的変移のような、
資料的事実を望んで読むと、(ありゃありゃ)となります。

好感のある、清潔感のある、潔い本です。

『日本の神話』瓜生中

タイトルの頭には「知っておきたい」とついてます。
手に取った感触とか、その面構えで
本の内容がわかるものですが、
本書もそう。

(日本の神話を分かりやすく説明してるんだろうな)
と思い、購入。そして、その通り。
もちろん記紀からなのですが、
単純に面白い!分かりやすいし。
一瞬で読めますよ。

『斜陽』太宰治

言わずもがなの一冊。
何度も何度も繰り返し読んでいる本。
本書をテキストに脚本を書いた。
『革命』の脚本を書いた。

不意に
どうしようもなく読みたくなることが、ある。

人間は恋と革命のために生まれてきたのだ。

『睥睨するヘーゲル』池田晶子

これも何度も読み返しているなあ。
亡くなられた池田さん。
その息吹が今も息づく名作。
高木にヘーゲルっぽい思考経路を植え付けた一冊。

彼女の著作は、全てそうだけど、
哲学を実学にしようと、
あがいてあがいてもがき苦しんでいる。
その苦しい苦しい微弱な電流が、いとおしい。

生きていてほしかった。
もっと彼女の言葉がほしかった。

生きていてほしかった。
彼女を生かさねばならなかった。
どんなテロリズムを駆使しても
彼女に生きていてほしかった。

『第四間氷期』安部公房

この作品を舞台にすることができたら・・・
と、いつも夢想する。
きっといつか脚本に書くだろう。
書いても上演できる可能性が限りなく低いにもかかわらず、
いつか、きっと書くだろう。
大人の事情で上演できなくても、書くだろう。

巨大な自己犠牲。
初めて読んだときには気づかなかった、その巨大さ。

『夕刻のコペルニクス1』鈴木邦男

先日、鈴木邦男さんとお会いして、
数人で楽しいひと時を過ごし、
帰宅して、手に取った本書。
今後の仕事の資料をまとめながら、読み始め、
パソコンがCDやDVDを焼いてる間に読み、
100枚近い紙をプリンタが頑張って出力している間に読み、
明け方、読み終えた。

なんだか、懐かしく、

そして、数時間前のいろんな話を思い出しつつ。
読み終えて、目を上げるとフルトヴェングラーがいた。
テレビモニタに白黒の映像で熱情を振る一人の男。

フルトヴェングラーにヒトラー。
ともに時代を駆け抜けた人間。
そして、今生きている66億の人間。
ともに時代を疾走している66億。

地球の誕生からたかだか45億年。

一人の人間が目いっぱい頑張る数十年も
地球が目いっぱい頑張る45億年も、また同じ長さ。

フルトヴェングラーの白黒映像が小さな画面の中で
目いっぱい。

さあ、ちょっと寝るか。