『近代主義』【現代日本思想大系34】編集・解説/日高六郎

2008年10月10日 23:05:22

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9月の読書は、堕落していた。
軽い読み物ばかり読んで、読みやすい本ばかりを読んで、
数だけをこなし、たくさん読んでいますよといい気になって、堕落した。
これでは、何冊読んでも意味が無い。
読めば読むほど笑われるだけだ。そんな状況になった言い訳ならある。
けれども、言い訳をしたところでで
読書をした内容が変わるわけでもない。

心を入れ替えて、腰を落ち着けた。
10月になって、ペースが落ちたけれども、読書の醍醐味を堪能している。

読書プロジェクト・コード名「鈴木邦男」
日本思想大系読破という目標。
昨年の今頃読み始めたはずだ。ちょうど一年が経った。
【戦後日本思想大系全16巻】は、読み終えた。
【現代日本思想大系全35巻】は、現在最終巻。
【近代日本思想大系全36-1巻】は、これからだ。
シリーズ全86巻。現在までに50巻を読み終えた計算だ。あと36巻。

年内に読み終えられるだろうか。
数としては可能だろう。充分に読了できる数だ。これ以上堕落しなければ、いける。

『何のための読書だ』と、喝。
鈴木さんが言ってたではないか。
「この思想大系を読んでいれば、現代のものなんか読む必要はない」

脚本を書いている。12月の舞台。阿佐ヶ谷ロフト。
その一本の物語もラストシーンだ。

しかし、筆が止まったままだ。イメージだけが有機分裂。
無秩序に自己増殖を繰り返している。

こんなにわからないことがわかった経験もはじめてだ。
こんなに書けないことがわかった経験もはじめてだ。
全ての登場人物を引き受けている。
そりゃそうだ。自分は脚本家だ。この一本を書いている。

引き受けすぎたのか・・・
登場人物が、ここに居る。
24時間、この体内に居る。
居過ぎる。

自分が画家であれば。
今、見えている頭の中の画をカンバスに叩きつけることができるのだろう。

『近代主義』【現代日本思想大系34】
編集・解説/日高六郎

近代主義。あらためてこう書くと、ん?と思う。
近代主義?どんな主義だ?と。
近代主義者だと自ら名乗った人がいたかなぁ?

マルクス主義者、社会民主主義者、自由主義者・・・
それぞれ近代をリードしてきた主義者たち。
けれども、近代主義者?

と、思っていると、本書で明確にされていた。

『近代主義は、「近代主義」的傾向なるものを批判しようとする人々によって
外部からつけられた他称である』

『近代主義者たちに共通のものは、
日本の近代化とその性格そのものにたいする強い関心である。』

政治論から文化論まで、近代主義批判からの視点で、
日本の近代主義傾向者を論じている。
編集の仕方がうまい、と思う。

10月、秋、心を入れ替えて読書の醍醐味を取り戻しつつある。


解説「戦後の『近代主義』」日高六郎

【近代的人間像】
「福沢における秩序と人間」丸山真男
「福沢諭吉の哲学」丸山真男
「近代的人間類型の創出」大塚久雄
「ロビンソン・クルーソウの人間類型」大塚久雄
「現代日本の社会における人間的状況」大塚久雄

【主体性の問題】
《座談会》「唯物史観と主体性」
・・・清水幾太郎・松村一人・林健太郎・古在由重・丸山真男・真下信一・宮城音弥
「主体性の客観的考察」清水幾太郎

【伝統と近代化】
「第二芸術」桑原武夫
「伝統と近代化」桑原武夫
「日本社会の家族的構成」川島武宣
「日本文化の雑種性」加藤周一
「超国家主義の論理と心理」丸山真男
「開国」丸山真男

【社会的発言】
「運命の岐路に立ちて」清水幾太郎
「講和と平和」都留重人
「科学と政治」都留重人
「戦争と平和に関する日本の科学者の声明」安倍能成・ほか五十四名
「講和問題についての平和問題談話会声明」平和問題談話会