●869●『快盗ルビイ・マーチンス』『無限の果てに何がある』『内なる辺境』『死に急ぐ鯨たち』

2009年12月10日 00:59:26



本を読むか、脚本を書くか、ベッドにひっくり返るか、
頭痛にイラつき、体温計を叩き壊したくなる。
携帯の充電が切れそうだ。いつから充電してないんだ。
口内炎と喉の渇き。アイスクリームを食べたいと思いつつ、面倒だと思いつつ、
もしかしたらと、冷凍庫を開けてみる。入ってない。そりゃそうだ。
最初から入ってないことは知っていた。知っていたけれどももしかしたらと。
脚本を書きながらあらためて痛切に感じる。痛いほど。
こうして書くことはたった一人のためにしかできないことだと。
一人の為だけのセリフ。一人のためだけの脚本。そんなことを散々書いてきて、
やっぱり今もこうしてあらためて知る。
芸術が万人に奉仕するはずがない。それは奉仕されていると思う万人の思い上がりだ。
芸術家はたった一人のためにしか創造することはない。絶対にそうだ。
一人以上のために何かを創れるはずがない。
何故といって芸術家が一人だからだ。
一人を知るものが創るものだからだ。
たった一人の居場所。誰も侵すことのできないここ。
一人でここに座り不可侵のここはたばこのけむりを立ち上らせて一首。
歌を、書いた。歌もそうだ。たった一人の人にしか歌うことはできない。三首、
脚本に書き込んだ。太宰が、芥川が、壇が、透谷が、有島が、火野が、三島が、川端が、
ベッドの周りに散乱する。何だ、全員が全員、自殺した人ばかりじゃないか。
誰も彼も自殺してるじゃないか。ユートピアを夢見ながら。見沢さんも、そうか。
誰だ、背中を押すのは、と後ろを向くと、彼がいた。
この誰も侵すこのできない劇作の場にずかずかと入り込んでくるおしゃべりな彼だ。
私語する死霊ども。私語するという苗字を持つ彼らはその名の通りしゃべり続ける。
背中を押すな。
なんだかんだと、次の脚本を書くために踏みとどまってんだ。
歌一首歌うために踏みとどまってんだ。
背中を押すな。
まったく、本を読むか、脚本を書くか、ひっくり返って生きたふりをするか死んだふりをするか、
読むか、書くか、死ぬか、どんな思考経路を辿ってみても結論は一緒。ままよ、
携帯の電池が切れるまでほっといてみることが、まず一つ。
そして二つめは、今から1000回、一つの言葉を口にしてみる。その言葉がつれてくる完全な
創造がぼくに脚本を書かせる。その言葉がかもし出す完全な香りがぼくに脚本を書かせる。
三つめか、そりゃアイスクリームだ。口内炎を冷却退治。

歌をまた一首脚本に彫りこみながら。

『快盗ルビイ・マーチンス』ヘンリイ・スレッサー

(267)

『無限の果てに何がある』足立恒雄

(258)

『内なる辺境』安部公房

(106)

『死に急ぐ鯨たち』安部公房

(238)